2018-08-09

三行スパイ

私の仕事は、三行スパイだ。

こんなこと、匿名であっても書くべきではないのかもしれない。

それでも、秘密を持つと、人は誰かにそれを話したくなるものだ。

あの理髪師の気持ちが、いまならとても、よく分かる。

三行スパイ仕事内容は簡単だ。

作家から依頼を受け、ライバル作家の構想から、三行を盗む。

依頼者はその三行を使えるし、盗まれた側は使えない。

たった三行?と思うかもしれないが、三行は重要だ。

メロス激怒した。」のない「走れメロス」を想像できるだろうか?

吾輩は猫である名前はまだ無い。」のない「吾輩は猫である」は?

精神的に向上心のない者はばかだ」のない「こころ」は?

核心となる三行を失った作品は、それだけでもう作品として成立しないのだ。

ここまで書いて、私は致命的なミスに気付いた。

畜生、私としたことが…。油断していた。

この文章絶妙オチ三行を盗まれるとは…。

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