人もまばらで、岩造りの浴槽に浸かると一気にリラックスして肩に風を感じて幸せだった。
ふと、浴槽の水面から上に出ている岩に触れて感触を確かめたくなった。
そっと手を伸ばすと、岩はゴツゴツとしていてほのかなぬくもりを感じた。
その瞬間、私の脳裏に風俗店で触れた女性の感触と温感が蘇った。
薄暗い部屋の中で僕の右手が触れたのは紛れもない人間の肉体だったのだという記憶が鮮明に再現した。
茶色く豊かな頭髪に鼻を近づけて感じたほのかなシャンプーのよい匂い、部屋中にこだまする浴槽に水の溜まっていく音、遠くにぼんやりと見える金色の風呂椅子、なにもかもがその瞬間のままだ。
僕は女性にただ触れて、それ以上の感想を持つことができなかった。興奮も、感激もなかった。
読了後の後味が暑くも寒くもない今の季節にぴったりだね 俺も露天風呂入りに行きたくなった