病気と言っても、そんなに重篤なものではなく、大丈夫大丈夫さくっと切ってさくっと終わらせよーねみたいなノリだった。
こっちも初めての手術で緊張していたため軽めのノリの医者に少しほっとしたのも事実だった。簡単なら大丈夫だ。麻酔もあるし怖くない。
そうは思ってもやっぱり、いざ前日になると自分の体に刃物が入ることの怖さ。もしなにかあったら、もし死んでしまったら、そう考えるとこわい。
当日、手術の前に恋人が訪ねてきてくれた。
大丈夫だとLINEで伝えておいたのに、学校にいく前に顔みておきたくて、と彼が笑う。
隣に座って他愛もない話をする。昨日の夕飯はハンバーグで嬉しかったとか、病院食はやっぱり薄味だとか、そういうお互いの話をしながら、気がつくともうすぐ手術の時間だ。
あぁ、やっぱり怖いな。やっぱやめたとかできないかな。
そう思ったのが伝わったのか、膝に置いていたわたしの手を彼がギュッと握った。
少し高めの体温が緊張で冷えた私の体に染み込んでいくのを感じた。
大丈夫だよ。
そう彼がいうと、あぁ、大丈夫だという気がしてきた。なんか、とにかく大丈夫なんだという根拠もない自信が湧いてくる。
その愛しさに思わず好きだな、と漏れそうになったけど、この手術が終わって、また彼の顔が見れたら言ってやろうと思ってグッと我慢した。