高校時代、30歳になったら殺してやるって言われたことがある。
たまに一緒に帰る時は、ずっと彼女の話を聞いていた。
親にすら言えない切実な悩みとか、嫌いな奴の話とか、病気の話とか。重い話が多かった。
助言なんかしなかったし、何なら笑い飛ばしさえしたのに、今思えばなんであんなに話してくれたんだろうか。
気がついたら懐かれていた。体型も性格も、大型犬みたいだったな。
「あなたのことが好きだから、剥製みたいにして、いつまでも取っておきたい」
って言われたのはちょうど今頃の季節だった。
冗談だったとしても、まあ中2っていうか電波っていうか、とにかくイタさ丸出しだ。
もちろんドン引きしながら、でもちょっと嬉しく思ったのも本当だった。気持ち悪い。
もうそろそろ約束の歳になる。なんとなくふとした時に、彼女が来るのを待っている自分に気づく。
どうやって殺してくれるんだろうかって考えてはぼんやりして、我に返った瞬間にたまらない気持ちになる。
死に損ないであとどのくらい、生きていくんだろうか。
そういえば別の子とは、40歳になってもお互い結婚できなかったら一緒に住もうなんて約束もした。
もう二児の母だ。