改めて気付くのは、映画のリアリティには2種類あるということだ。
『シン・ゴジラ』におけるリアリティは、ゴジラというフィクションを本当に存在するものかのように描くことだ。
そのために庵野監督は官公庁に対する徹底した取材を行い、3時間映画に匹敵する台詞量(情報量)を早口で映画に織り込んだ。
他方、『君の名は。』が目指したのは、フィクションを徹底的にエモーションで押し切ることだ。
本作では中盤で大きな謎が明かされるのだが、それは主人公たちのこれまでの行動に大量の矛盾点を生じさせる。
また、問題の解決策も、どうしてそうしたらそうなるの?という理屈はまったく科学的でない。結末も言ってしまえばご都合主義的だ。
しかし、本作では(少なくとも観ている最中は)これが気にならない。
主人公たちに感情移入した観客たちはジェットコースターのような感情の起伏に振り回され、こうした些細な点が気にならなくなるのだ。