お銚子1本と板わさ、焼のりを注文し店内を見渡す。おしぼりで顔を拭くのはいけない。
いや、様子がおかしい。二人の器は空だが、もう一人の前には何も置かれていない。
その一人が口を開く。
「申し訳ない、鍋焼きうどんを頼んだ私が悪かった。きつねそばにすれば良かった。先方も待っているだろうから先に行ってくれないか」
明らかに若い二人はその男を蔑んだ目で見下しながら、千円札2枚を机に置いて店を出て行った。
俺はその男の顔を見た。おじさん、あの時のおじさんじゃないか。
おじさん、連れが軽い物注文したのにあんたは鍋焼きうどん頼んだのか。その後商談の約束もあるのに。
鍋焼きうどんはお一人様でゆっくり食べるか、全員が同じものを頼むときだけ食べていい神聖なものなんだ。
でもおじさん、俺はあんたのことが嫌いじゃない。
右へならえの風潮に抗うおじさんが俺は好きだ。
もし山田かまちや尾崎豊が中間管理職になっていたら、鍋焼きうどんを注文していたはずだ。おじさんと同じように。
俺は店のお姉さんに断り、おじさんの机に移動して言った。「お姉さん、鍋焼きうどん追加」
鍋焼きうどんを待つ長い間(至福の時間だ)俺はおじさんに聞いた。
「その商談、おじさん無しで大丈夫なのか」
おじさんは力無く首をふった。
悪かったおじさん、くだらないことを聞いた俺が馬鹿だった。
俺はまた厨房に向かって声を掛けた。
対面のおじさんが必死に七味を振り掛けている。 おじさん、ここの七味は香り重視だ。たれの味を損なわない吉野家のこだわりだ。 そんなに辛いのが好きか、おじさん。 俺はU字カウ...
午後2時過ぎ。蕎麦屋で一杯やるにはこの時間に限る。 お銚子1本と板わさ、焼のりを注文し店内を見渡す。おしぼりで顔を拭くのはいけない。 先客は4人掛けテーブルに営業らしきネクタ...
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