職場に送ってもらって、裏口まで歩いていると自転車に乗った彼が普段していないマスクを着用してしんどそうな顔をして現れた。
彼を見て、一瞬、私の動きが止まる。
こちらを見ている、気がした。
そんな訳ないと自分に言い裏口の扉をくぐる。
後ろから、彼が着いて来る。
急ぎ足になった私は、彼が来ているかを確認する為に振り返る。やっぱり着いてきている。彼も仕事があるのだから当たり前だ。
また私は彼を確認したくなる。だってこんなにも偶然会える事を願っていたのだから
けれどさすがに後ろを何回も振り返れば怪しいだろうから我慢して、ゆっくり歩けば彼が後ろから追い抜いてくれるかもしれないのに、あまりの偶然に私は焦って急ぎ足で歩いてしまう。
ロッカーに着く。私はドキドキと高鳴る胸を落ち着かせる為に深呼吸をした。
会えたのだ、本当に。
ずっと願っていた、偶然で。
私が買い物をしに行けば会えるのは当然なのだ。
けれどそれだけでは嫌だと、同じ館内で偶然見つけた求人広告に電話をして働き出した。
同じ館内で働いている人としていつかは会えるかもしれない、すれ違って挨拶が出来るかもしれない、と思って毎日を頑張った。
今日はまさしくニアピンではないか。もう少し働いていたら本当に彼と挨拶を交わせるかもしれない。もう少し、あと少し。
その日までどうか辞めないで。挨拶だけだから。きっとそれより高望みはしないから。
なんて、全部作り話でした。チャンチャン♪