2015-10-05

父の手料理

シルバーウィーク

久しぶりに嫁ぎ先の京都から東京実家へ帰ると父が料理をしていた。


母がいなくなって2年。

最初は家の裏のスーパー弁当ばかり食べていたが、最近料理をはじめたんだ。」

と嬉しそうに語ってくれた。


せっかくだから食べて行きなさい」

はなからそのつもりだったが、父の焼いてくれた「サンマ」とインスタント味噌汁

惣菜コーナーで売っていたきんぴらを食べた。

料理できるようになったんだね」

私はちょっと泣いていた。

いつまでも弁当じゃ身体が悪くなるからな。ははは」

父は照れ笑いしていた。

唯一の料理と呼べるサンマの塩焼きはちょっと焦げていたが、

脂が乗っており美味しかった。

思えば父の手料理は初めてだったかもしれない。

それからサンマをつつきながら、しばらく母の思い出を語り合った。

母は死んだのではなく、2年前に突然蒸発した。


「まぁ、元気でやってるといいけど。」

父は気が長い。怒ったところをみたことがない。

「生きてるのかなー。」

と私。母には厳しく躾けられたのに、蒸発するなんて母失格と思っている。

思い出すと泣けて来た。

気が付くと父も泣いていた。

サンマの煙が目にしみてね……。」父はごまかした。


その時、台所から灰色の煙が流れてきた。

急いで見に行くと、魚グリルの引き出しが半開きの上、ガスがつけっぱなしで、サンマの脂が発火していた。

ガスを消し、換気扇を回して、グリルの引き出しを押し込んで、しばらくすると煙も消え鎮火した。

ガスコンロは熱で変形していた。


「コンロ、こわれたら魚が焼けなくなるな。」

父がぼそっともらした。

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