久しぶりに嫁ぎ先の京都から東京の実家へ帰ると父が料理をしていた。
母がいなくなって2年。
「最初は家の裏のスーパーの弁当ばかり食べていたが、最近料理をはじめたんだ。」
と嬉しそうに語ってくれた。
「せっかくだから食べて行きなさい」
はなからそのつもりだったが、父の焼いてくれた「サンマ」とインスタントの味噌汁と
惣菜コーナーで売っていたきんぴらを食べた。
「料理できるようになったんだね」
私はちょっと泣いていた。
父は照れ笑いしていた。
脂が乗っており美味しかった。
それから、サンマをつつきながら、しばらく母の思い出を語り合った。
母は死んだのではなく、2年前に突然蒸発した。
「まぁ、元気でやってるといいけど。」
父は気が長い。怒ったところをみたことがない。
「生きてるのかなー。」
と私。母には厳しく躾けられたのに、蒸発するなんて母失格と思っている。
思い出すと泣けて来た。
気が付くと父も泣いていた。
急いで見に行くと、魚グリルの引き出しが半開きの上、ガスがつけっぱなしで、サンマの脂が発火していた。
ガスを消し、換気扇を回して、グリルの引き出しを押し込んで、しばらくすると煙も消え鎮火した。
ガスコンロは熱で変形していた。
「コンロ、こわれたら魚が焼けなくなるな。」
父がぼそっともらした。
http://kakaku.com/kaden/fish-roaster/