小学校に入ってすぐの頃だったと思う。
夜になると両の手で箱を持っている幻覚を見ることが多かった。
箱はクルクルと回転し、また両手にちょうど収まるように大きさが変化するのだ。
すごく不気味だったし、どうしても手から離れないのでわんわん泣いていると、いつの間にか消えてなくなっているのだった。
そのうち物心がつき始めると、この箱も気のせいだと思って消すことができるようになった。
この話をサークルの先輩にすると「イマジナリーボックスか。そういう話を聞くと感染るからやめて欲しい」と言われた。
考えてみればこういうことは他にもあった。
外で少し明るいところを見ると空中を飛ぶ微生物が見えていて、ゾウリムシだとかミジンコだとかを数えて遊んでいた。
しかし飛蚊症という言葉を聞いてそれを意識してからは微生物が見えなくなってしまった。
小学生の時に愛読していた本の内容を信じていて、その影響でコロポックルを数回見たことがあったが、その本の大人が書いた感想をネットで読んでからは、コロポックルが目の前に姿を現すことはなかった。
高校生くらいの時にヒュームだかなんだかの話を聞いた影響で、「自分が見たり考えたりしているものはただの脳内の化学反応なんだ」と考えて見たが特に何も変わらなかった。
ただ、最近になってこういうことを考えてみると、見えるもの全部がイマジナリーボックスに思えてきて面白い。
残念なことに、イマジナリーボックスと違って形を変えたり消したりできないのだけど。