25歳、デザイナー兼プログラマー。デスクの上に広がったコーヒーの空き缶たち、吸殻でいっぱいの灰皿。
朝になるとオフィスに入ってきて「もう、相変わらずなんだから…」と呆れながらも多くを語らずテキパキと片付けてくれる彼女。夜中のミーティングで誰かが笑うたびに舞った煙草の灰で汚れた机をため息混じりに拭きながらも、その横顔は嫌そうでもない。
オフィスの冷蔵庫には缶コーヒーしか入っていないことを知っていて、買い出してきた食材を隅っこのキッチンスペースで調理し「どうせマトモなもん食べてないんでしょ」と言いながら朝ごはんをつくってくれる。ぼくは何か返事をするわけでもないけれど、パソコンの画面を見ながらそれを食べ「おいしい」と一言だけ言う。その言葉でぱあっと彼女の顔が明るくなる。
食事を終え、再び本格的に仕事をはじめるぼくを見届け、彼女は皿洗いをはじめる。それが終わると邪魔にならないように、隅っこで編み物などをしている。せっかくの休みの日を、わざわざこんなところで過ごさなくてもいいのになあと思う。彼女のために何かしてあげたいと思いつつも、納期の迫った案件のことで頭がいっぱいで、彼女のことはいつも後回しになってしまう。
仲間たちと独立して立ち上げた会社は、まだ軌道に乗っていない。夜中、みんなが仮眠スペースに入ってからも納期の迫った案件と闘っていたら、いつの間にか寝ていた。そして上記のような夢をみた。目覚めたら、コーヒーの空き缶たちと吸殻でいっぱいの灰皿が目に入った。25歳、デザイナー兼プログラマー。彼女はいない。納期は迫っている。