会社を辞める決意をした後、よく後輩社員の昼飯を買い出しに行っていた。
後輩に行かせるのではない。わたしが昼飯を買いに行くのだ。
よく買いに行ったのは千駄ヶ谷のワゴン車で売りに来るローストチキンだった。
皮はパリッと焼かれていて、イタリアンシーズニングの風味のついたローストチキン。
あれはなかなかおいしかった。
後輩は昼食をとれなかった。
昼時になって席を立とうとすると、ボスが引き止めるのだ。
客から質問のメールが来ているが、あれの経緯を説明しろとか、バッチ処理が終わっていないから最後まで経過を見守れとか、
一つ指示を実行しているとリアルタイムで目の前のタスクが詰み上がっていって、いつまで経ってもその場を離れられなくなる。
仕事が終わったら食事に行ってよい。これは建前だ。
こなしてもこなしても次から次へとやることが増えていく炎上現場ではそうはいかないだろう。
ご飯も食べられないなんて…
そして辞めるまでの間、後輩の昼飯のパシリを努めて続けることにした。