「僕が犯人だったんですよ。」
そういった彼は逮捕時にみた猫を抱えた幼さの残る顔ではもうなかった。
年が経ち時効を迎えたこの日、彼は軽々と自らがやった事を語り始めた。
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年前、4人の冤罪を生んだ警察と検察はその屈辱をはらすために一人の男性を逮捕した。
その直後から報道された来歴はおそらく多くの人が納得できるものだったのだろう。
しかし、彼は釈放された。
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手がかりとなった監視カメラに映った姿を自分だと早々に認めた彼は、犯行を否定し続けた。
自宅のパソコンからも犯行に直接関わるものは発見できなかったという。
あの猫の写真をのぞいては。
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証拠がなければ立件すべきでない。
4つもの冤罪を作った事件のひとつめの教訓は真犯人と思われた彼を守ったのである。
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繰り返し犯行をカメラの前で否定し続けた彼は真犯人の代弁者となった。
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「偶然ですよ、偶然の賜物なんです。」
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