大学用の定期と乗り越し料金で通ってたある日、財布を忘れたことに気づいた
家に取りに戻るには電車で一時間以上かかるし、仮面浪人だったので友達も作っていなかった。
目的のなんばまでは二駅、歩けそうな距離だったので授業に間に合いたい気持ちから歩くことにした
大阪から電車で一時間以上かかる遠方に住んでて、まだ今ほどあいりん地区が全国に知れ渡ってなかった頃だったから
そこがあいりん地区と呼ばれる治安の悪い地域だなんて知らなかったんだ
ホームレスまがいの歯のないおじさんとおじいさんとおばさんしかいなかった
酒瓶の横で道路に寝てる人もたくさんいた
やばい空気が張り詰めてたけど、授業料を無駄にしたくないケチ心で突っ切った
幸運にも、何度か声をかけられた以外は珍しそうに見られるだけで済んだ
朝で明るく夜型のあいりん地区がまだ起きてなかったのもあるのかも
夜に行ってみよう。人間として落ちる誘惑がたくさんある。