■待ってる人がいるって、いい
結婚して、ちょっと。共働き。
普段は私の方が早く帰って、夕飯の支度をしている。
夫は玄関を開けると、いつも、「ただいま」と言いながら相好を崩す。
そのときの笑顔は、帰宅時にだけ見られる種類のもので、とても柔らかい。
その表情を見ると私もうれしくなる一方、
「そんなにも幸せかな」と、不思議な気持ちもあった。
この前はめずらしく仕事が長引いて、私の方が後に帰宅した。
帰ると家が明るくて、夫がニコニコ笑いながら「おかえり」と迎えてくれた。
テーブルには、あたためた昨日の残りものやご飯、お味噌汁。
安心できる場所で、誰かが自分を待っていてくれる。
しかも、何かを準備して。
とてもあたたかい気持ちになった。
夫の笑顔の理由が、はじめて理解できた気がした。
「後から帰ってくるのも、いいもんだね」と言うと、
夫はお茶碗をもちながら、「なかなかでしょ」とニヤリと笑った。
玄関を開ける夫の気持ちがわかったその日から、
迎えることが、より楽しみになった。
帰ってくる側があんなにうれしいのなら、
こっちももっとニコニコしてやろう! と思うのだ。
今日も夫は残業で遅く、
私は家で、ヤツの好物で迎撃してやるぞとほくそ笑みながら、
夕飯を作っている。
待つのも、待たれるのも、悪くない。
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