2013-04-05

虐待を受けてきたきみへ

このタイトルを見ていると、からだがむず痒くなってくる。

それはたぶん、この文章を書いているぼく自身が「虐待を受けた」ということを改めて認識しなくちゃいけないから。

「ぼくは虐待を受けたんだ」と認識することは今でもしんどいし、思い返すと頭がぼーっとしてきて、時が止まったような感覚になる。

ぼくは両親から虐待を受けてきた。周りの大人は、誰も助けてくれなかった。父親を殺そうと何度も考えた。でも自分が死んでしまった方が早いと思って、ぼくは何度も死のうとした。けれど、どうやったら死ねるのかよくわからなくて、ぼくはただひたすら自分の体を傷つけた。死ねないぼくは、ぼく自身に絶望した。

から離れれば楽になるだろうと思ったけど、違った。

家を出てからは、毎日昔のことばかり思い出した。胸が締め付けられて息ができなくなって、わけもわからず涙が出た。一人になると、必ず昔のことを思い出す。

これから先も一生あの時のことを思い返して苦しむんだと思うと、絶望した。小さい頃、自分死ぬところを想像すると安心して眠れたけれど、それは家を出てからも変わらなかった。

20歳を目前にして、ぼくは、生きるのに疲れていた。これから先もまだ何かあるなんて、もうたくさんだと思った。ぼくは自暴自棄になって、いろんなことをした。どうせ死ぬんだから、何にも関係ないし、怖くなかった。でも相変わらず一人になると苦しくて、涙が出た。いつまで続くんだ、ちくしょう、お前なんて早く死ね、ぼくはぼくの両親と、ぼく自身に向かって毎晩呪い言葉をかけた。

人にはこんなこと言えなかった。家にいる間ずっと虐待されていたこと、今でも一人になると昔のことばかり頭に浮かんで、毎日死にたいと思っていること。でも、似たような環境で育った人と出会った時、ぼくは我慢できずにすべてぶちまけた。その時、その人がぼくにかけてくれた言葉を、ぼくは今でも忘れない。

今までよく生き抜いたね。

そう言われた時、ぼくは胸が締め付けられて、息ができなくなった。涙が止まらなかった。それは悲しいからじゃない。

ぼくは今まで、よく生き抜いてきた。

自分自分をそんなふうに思ったことは一度もなかった。

お前、頑張ったな、そうだ、よく耐えた。胸に詰まっていたものが口から出て行くように、ぼくは声をあげて泣いた。

もしもあなた過去虐待を受けていて、そのせいで今も苦しんでいるなら、この言葉あなた自信にかけてあげてほしい。

ぼくたちは、地獄の中にいた。幼いながら、よく死なずに耐えた。ぼくたちは、今日までよく生き抜いてきた。

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この言葉を得て以降も、ぼくはやっぱり一人になると昔のことを思い出す。でも、涙はあまり出なくなった。幼い子供があんな劣悪な環境でよく耐えたなあと、昔のことを客観的に見られるようになった。(少しずつだけれど)

あれより最悪な状況は考えられないよなあと、電車の中でぼーっと思ったりする。

死にたいと思う気持ちも、前よりは薄れた。今まで頑張ってきたんだからもういいかな、と思う時もあるけど、今は、とりあえずまた死にたくなるまで、ぼくの人生を思い切り生きようと思う気持ちが強い。

昔のことを思い出すのは、しょうがない。きっとこれは一生続く。でも思い返すたび、ぼくはぼくに確認する。

ぼくは、生き抜いたんだ。

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