法律的なことをまず言うと、
民法第721条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
民法第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
民法第886条2項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
という条文があるのよ。
判例は、胎児であるころの権利能力は否定し、生きて生まれることを条件に胎児中のその能力を遡って肯定するという停止条件説(人格遡及説)という立場にいる。
つまり前提として胎児に権利能力はないが、出生という条件が成就したら「胎児だったときの権利能力があったことにしよう」とする。
胎児は、「普通はほぼ出生する」ので、出生する子供の享受できる権利のうち、親子の間の権利のコアの一つである相続権を「事後的に」認めよう、という感じ。
(子育てや教育もコアだが、これは本当に生まれてからでないと全く意味がないので扱われない。胎教という概念は民法学者にはないみたいだ)
どちらかというと、胎児の都合というよりは、親子関係を法的に規定するための扱いといえる。
古典的には、父親が死んだ時に子供が母親の胎内にいる場合、胎児に相続権がないと、父親が死ぬ寸前に出生した子供に相続権があることとの差異が問題になるので、じゃあ「普通はほぼ出生する」存在として扱い、生まれてから「事後的に」認めようという技術的な処理といえる。