2009-09-04

ダウンロード違法化反対家はセキュリティ研究家にどう対応すべきか

このエントリーを書くべきか大分悩んだが、セキュリティ研究家(以下Sとする)周辺で余りにも判っていない意見が乱立しているので書く事にした。

ことわっておくが、私は件のダウンロード違法化反対家を擁護する気は全くない。寧ろ強い怒りを感じる。

だが、それはそれとして、ここで書くのは別の話だ。

なお、ここではダウンロード違法化反対家(以下Dとする)が「SがDの事を記載した」と認識しており、かつ「本当にDの事が書かれていた」物とする。

Dがやるべき事は以下の6点である。

これだけで良い。

名誉毀損罪は具体的氏名を挙げていなくても成立する。

更に、名誉毀損罪は毀損の内容が事実であっても成立する。

背徳または破廉恥な行為のある人、徳義または法律違反した行為をなした者であっても、当然に名誉毀損罪の被害者となりうる。

今回のSの日記名誉毀損罪の成立要件を充分に満たしている。

では、Sはこれに対して何が出来るか。

恐らく出来る事は何も無い。

考えうる対策が役に立たない理由を以下に示す。

  • Dの事を書いた訳ではないと主張する

「DのIPアドレスを入手した」等の記載からSがDを特定した方法は明らかである。

日記の内容が真実であると主張するならば、Sが誰の事を想定していたかを偽装する事はまず不可能だろう。

また、日記全てが架空の話だと主張する事は可能だろうが、その場合、Sの信用は地に落ちる。

Dにとってはそれ以上裁判継続する必要も無いだろう。

  • 真実性の証明による免責を訴える

名誉毀損行為がa)公共の利害に関する事実に係るもので、b)専ら公益を図る目的であった場合に、c)真実性の証明による免責を認められる。

a)に関してはS(ないしS周辺のBLOG)が主張する通り公共の利害に関する事実であると認定されるかもしれない。

b)に関しても同様だが、SとDはa)に関連する事項で主張を違えている。また、Sの日記上、明らかに感情的にDを罵倒・嘲笑する記述が散見されており、「専ら」公益を図る目的であったと認定されるかは危うい。少なくとも裁判官の心象は相当に悪いものだろう。

最大の問題はC)である。

Sの主張は「偶然入手したIPアドレス」を元に「監視システムの記録」と一致したと言うものである。

しかし、「偶然入手したIPアドレス」がDのものであった事を証明する方法があるだろうか。

仮にあったとして、そのIPアドレスが「監視システムの記録」と一致したからなんだと言うのか。

「監視システムの記録」というが、所詮、自作サーバ自作ソフトウェアログに過ぎない。そんなものが裁判の証拠に成り得る訳が無い。

監視システム自体がwinnyネットワークを正しく記録している事は裁判後にも証明可能だろう。

だが、Dを糾弾したログの真正性を証明する事は不可能だ。少なくともSだけでは絶対に出来ない。

真正性を証明しようと思えば、同じ様にwinnyを監視しているセキュリティ研究機関のログをあてにするしかない。

公的機関がやっている記録ならば、裁判でも証拠として採用されるだろうが、個人のシステムであれば真正性は同程度だろう。

しかも、Sのシステムは単純にIPアドレスを記録しているだけでなく他の情報も記録しており、Sの主張はそれらの組み合わせで構成されている。

同じだけの記録を保管していて、なおかつ真正性を保証出来るだけのセキュリティ研究機関が都合よく出てきてくれるだろうか。

出てきてくれれば、なんとかなるかも知れない。

なければアウトだ。

監視システムログなど持ち出さなくても、Dが利用しているISPログを提出させれば良いと思う人も居るだろう。

過去に使用していたIPアドレスもそれで判ると。

だが、ISPログがいつまで保存されているかはISP次第だ。

一応の目安として3ヶ月位になっているが、絶対に3ヶ月保存しろと言うものではない。

Dは3ヶ月で不安なら、半年待てば良い。1年でも待てば良い。

名誉毀損罪の公訴期限の方がずっと先だ。

半年経って何故今更、と言われたら公訴方針を弁護士と相談していたと言えば良い。

真正性の証明が出来ないと言う事は、「Dの悪行」自体証明できないという事に他ならない。

これも選択肢として有り得る。

確かに名誉毀損はしたがDの悪行は証明された、と言う結末だ。

だが、Dの行為を証明する為には、先に述べた真正性の問題を解決しなければならない。

従って真正性の問題を解決できたが、公益性が認められなかった場合の選択になるだろう。

要するにDと心中だ。

しかし、名誉毀損罪の法定刑は3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金である。

さて、私が言いたいのは「図に乗ってんじゃねーぞ、くたばれS」って話ではない。

私としては、SにDの様なくだらない人間心中されては困る。

不法行為セキュリティプライバシー著作権侵害児ポル等々)に関わる研究は、それ自体が不法行為に近い行動を伴う。

winny著作権ファイルが流れている事を確認する為には、流れているファイルを見なければならず、それ自体限りなく著作権侵害に近い。

捜査権のない個人がやるならなおさらである。

強力な捜査能力を持っていると言う事は、捜査権を持っていると言う事を意味しない。

強力な発言力・影響力を持っていると言う事は、何を言っても良いと言う事を意味しない。

目的の正当性は、手段を正当化しない。

してはいけない。

筋の通らない事をやっている人間が居て、それが虚飾に満ちている事を知ったとしても、それを個人で裁く事は許されない。

それはただの私刑だ。

その昔、脆弱システム運用する企業に対して私刑の如く罵倒し、企業の無能を暴露しまくった人が居た。

結局、その人は正当な手順を踏まずに脆弱性暴露し、結果として逮捕された。

ミイラ取りがミイラになってしまったのだ。

個人がやれる事には限界があるし、一般的な限界突破出来る能力を持っていても、超えてはいけない一線がある。

今回のSの行為はその一線を超えている様にしか見えない。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」のだ。

  • もう1つだけ。 そもそもSはDの話をあんな形で日記に書く必要は無かった。 Dに面と向かって「このwinny野郎が」と言ってやれば良かったのだ。 その上で、D自身に謝罪させるなり、Dに通...

  • あの日記で「ダウンロード違法化反対家」が誰だか特定できるの? 具体的氏名を挙げていなくても成立するといっても、個人を特定できなければならないけど?

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