宮崎駿が母親を好きだから、ヒロインの母性が強い(または母親そのものである)というのは簡単なんだけど、実はちょっと違うんじゃないか。
少年少女の冒険活劇を作ろうとした時、彼はその年齢の子どもに目線を合わせようとするのではなく、その子どもそのものになりきっているとしたら。母親の影響力の大きさ、心に占める割合の大きさを映画に反映していると納得できる。
さらに、子どもの視点と歳を重ねた自分の経験、その両方を正確に使いこなして物語を構築する能力があるとすると、「君たちはどう生きるか」は子どもである自分がこれから直面するであろう人生の困難を、歳を取った自分が受け入れ、導き、手渡そうとする、自分から自分への継承・生まれ変わりの映画である、とすることもできる。