2021-04-13

私は円周率になりたかった

私は円周率になりたかった。

円周率はほぼ3。つまり保母さんになりたかった。

保育園に通っていた私は保母さんにいろんなことを教えてもらって、優しくてお母さんと違って怒らない保母さんのことが好きだった。

から漠然と、私は保母さんになりたいと思うようになった。

成長して、円周率を学んだ。

私が学んだとき円周率は「3.14」つまり、ほぼ3だった。

私は保母さんになったら「私、円周率なの」というジョークを言うのだと漠然と思っていた。

その時のことを想像してクスクス笑っていた。

時は経ち、将来のことを真面目に考えるようになった。保母さんになるための道を探した。

けれどその時にはもう、保母さんにはなれなかった。保育士というものに変わっていた。

円周率も3になっていた。

ダンジョキョードーサンカクカシャカイとやらはきっと社会を良くしている。保育士になりたかった男性が、呼称を気にしなくてよくなった。

子供の世話をするといえば母である、という固定概念も取り払われつつある。

教育要綱は二転三転していてよくわからない。今の円周率はいくつなんだろう。今の人達円周率をほぼ3と認識しているのだろうか。

とにかく、時代は変わった。

私は円周率になれなかった。

「私、円周率なの」というジョークは日の目を見ないままここで供養される。

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