というのが昔、学生の頃に下宿してた安アパートの近くにあった。道沿いに3つ程並んだスレート倉庫のうちの1つで、文字だけの小さな看板、引き戸の窓の内側にかかる厚ぼったいカーテン。何年かは前を通るだけだったが、ある時ふと思いついて入ってみた。
棚にずらりと並んだビデオ。ビニールの袋に包まれて、中には生写真、手書きタイトル。
20そこそこの私は、どれにしようかと深く迷った。選ぼうとすればするほど迷いは尚のこと深まった。のぼせるような気持ちで棚を行ったり来たりした。
どれくらいそうしていたのか、厚いビニールカーテンのかかったカウンターの切れ目から、店主が言った言葉にハッとした。
モザイクなしと書いてあってもモザイクあるし、どれもこれもそう変わったもんじゃないよ、にいちゃん。
うつむいて顔が火照るのを隠して、逃げるように私は店を出た。
ああ、あんときのにいちゃんか。元気にしてるか?もうエロビデオなんて時代じゃなくなってもうたな。 まあ、元気でやりや。