最近はよく空を飛べるようになった。
まず「跳んでやるぞ」という、空を浮遊する感覚を強くイメージする必要がある。
そうしてようやっと飛べても、常にイメージは保ち続けなければならない。
浮遊するイメージの強さに比例して上昇し、それが途切れると下降してしまうからだ。
空を飛べると言うと聞こえは良いが、実際はバルーンファイトのようなものである。
調整には集中力と繊細さが要求され、前進するスピードは遅く、三次元的な飛行を楽しむ余裕はない。
にも関わらず俺がこれを多用するのは、副次的な効果として無敵になれるからだと思う。
夢の世界では俺を追ってくるヤツがいる。
その存在がどういったヤツなのかは様々だが、とにもかくにも俺は逃げなければならない。
しかし、これが中々に大変。
夢の世界では重力が凄まじいようで、俺はゆっくりとしか動けないからだ。
大声も出せないので助けも呼べない。