最初は混んでいたものの、主要駅に止まる度人がどっと降りてはわずかに乗り込む。
繁華街から住宅街に向けて走っていく電車には、気づけば顔の赤いサラリーマンと、若い大学生の男性と、声を潜めて笑いあう中年の女性達と、その他に音楽を聴きながら船をこぐ人が幾人か。
先ほどぎゅうぎゅうに乗っていたとは思えないほど座席は歯抜けの様相だった。
どこに座っても良かったが、なんとなくそのまま立ってドアに寄りかかり、ガラスに映り込む車内を眺めていた。冷房で冷えたドアが湿気でべたついている。
その時ごおっと音がして、電車の揺れで頭を打った。予想外の痛みに驚いてその部分をさすりながらドアの外を見れば、電車は地上に出ていた。
上へ出た衝撃で電車が揺れたのか、と眺めていると街の白い明るい光が流線型に流れていく。川の上に差し掛かり遠くを見れば、明かりはオレンジや黄色が増えて光っていた。
真っ暗な川の水面が電車の光を受けて銀色に光っては黒く戻って漂う。
そのまま終点まで行ってみようか、と思いながら結局最寄駅で降りた。雨は止んでいた。
夢のような夜だった。