ザッハトルテという一種の菓子がある。分類上はケーキだがタルトだと思っても問題なかろう。杏と砂糖を小麦粉で繋いだ羊羹のようなものにチョコレートを塗って作られる。製法的にはスポンジだが空隙がフルーツ羊羹で満たされたような構造をしているところが大きく異なる。建前としてはチョコスポンジケーキを杏ジャムで積みチョコレートのグレーズをかけたものだが、実態はチョコスポンジケーキに杏ジャムを詰め込んで代用羊羹とし全面に板チョコを形成したようなものだ。食う側からすればフルーツ羊羹入りチョコレートなのだ。
これが食えないのだ。昔は日本でも食えたらしいのだが、今は中々食えないのだ。チョコレートがけのチョコスポンジケーキは食えるがそれはザッハトルテではないのだ。スターバックスが置いているので気になって買ってみたがチョコスポンジケーキだった。悲しい。
おそらく大衆の舌に合わないのだろう。食ってスポンジ感がないケーキなどまずない。一般的ないちごのスポンジケーキなら押せば沈むしっとりと柔らかいスポンジが最適だろう。仮にソースを仕込んでもスポンジにすべて染み込ませはしないし、ラム酒などを染み込ませても濡らすだけにとどめスポンジの断面が舌を撫でるように作るだろう。