伊勢丹の蚤の市でドライフラワーを前に、梨木香歩さんの小説また読みたいなとつらつらあらすじを思い出していたら、時間を忘れた。
どうやって家に飾りつけようかとインスタを流しながらドライアイスの道を滑るように帰ってまだ決まらない。
何かの映画で見たポスターを奥に飾り紐で吊り下げるのはどうだろうと決心がついて、机の引き出しを探すが画鋲も押しピンもなかった。
その代わり石膏がついたままのネジが一つ。
思い返せば文房具店に足を運んだのは二子玉川の高島屋が最後か?
...十二年前だった。家族がまだいた頃だ。
男やもめも過ぎると、画鋲がないことにも気づかないらしい。
JRシステムの壁掛けカレンダーは新年会の二次会の景品だから無理と毎年うっすら諦めて、今年も諦めたことを思い出した。
部屋干しの外套がかかったままのカーテンレールが決して動くことがないように
壁紙もまた気づけば日に焼けた色もそのままに空白のまま。
それもイメージフィルタをかざせばわからないし、何もない壁につけた机の上は写真台にちょうどいい。と思っていた。
武蔵美の人の迷著「線の稽古 線の仕事」に従えばどんなキャンパスにこの壁はなるのか。
白い壁を前にまた時間を忘れた。歳とった。