数秒の遅れも、一瞬の見逃しも許されない――世間ではそういうことになっている職業、車掌。
けど実際は、時間を守って行動している体でやっていれば気を抜いててもなんとかなるし、
たまにアナウンスやドアの開閉でしくじったとしても、何事もなかったように事が進むか、客側に非があったということになってくれる。
加えて、車内で独り言呟いてる糖質にヘイトが集まったりするおかげで、自分の非が客に転嫁されやすい。
ほんといい天職だ。些細な誤字や失言一つで大きく足元をすくわれるようなそこらの零細企業に就かなくてよかった。
無人駅で全員が改札を通るまで見張らなきゃいけないという表面上の役割もあるおかげで合理的に人間観察もできて尚更そう感じる。
たまに改札でエラー吐いて慌ててる人から合法的に金を毟り取れるし、人の上に立ててるって感じがして優越感に浸れて最高だわ。
こんないい職に就いちゃうと、四面楚歌も同然の他の職業が格下に見えて、自分が天職に就いたんだなって気持ちが更に昂って幸せの極みだ。