2017-02-13

鳥の神様

ある時、鳥の神様人間達にこう言いました。

「みなにひとつずつ、卵を与えよう。

この卵は何者でもないお前達に、世界中からたくさんの承認をもたらすだろう。

そしてお前達はこの世界スターとして、ネット上に輝き続けるだろう。」




「ただし。

卵はただでは孵らない。

お前達の通勤時間を、趣味時間を、仕事時間を、この卵に捧げるのです。」






神様は気まぐれでした。こんな試みをしたのも、ほんの出来心からでした。

しかし、人間達は神様の予想を遥かに超えて、この卵に身を費やし、承認を求め続けるようになりました。


人間たちが最も欲していたのは"ファボ”と”リツイート"でした。

人間たちは食事時間も、恋人との時間も、寝る間も惜しんで、時には人の卵を盗んでまで、"ファボ”と”リツイート"を稼いだのでした。


やがて人間たちのステータスは、外見や能力ではなく、”フォロワースウ"になりました。

フォロワースウ"の多いもの尊敬され、少ないものは虐げられるようになりました。




この時ようやく、人間たちは気づき始めました。


この卵は一生孵ることのない、悪魔の卵ではないかと。


しかしもう、戻ることは出来ません。

卵を持っていない者は、この世界存在しないも同然です。

卵を捨てたら、また、”何者でもない者”に戻ってしまうのです。

それが怖くて、人間は卵を捨てることができません。

この、孵らない卵を。

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