ある店で、店員どうしが話をしていた。
「こんど取り扱いを始めた新商品、すごいな。あれのおかげで売上が大きく上がった。」
「でも、この新商品、取り扱い方法が今まで扱ってきた商品と全然違うんだな。今まで身につけてきた習慣や知識が通用しなくて大変だよ。」
「いやいや、それは今までの習慣や知識が狭い範囲でしか通用しないものだったってことさ。古い習慣を改めるいい機会だよ。頑張ろうぜ。」
「ああ、頑張るよ。」
それからしばらく経った。
「うーん、頑張ってはみたけど、やっぱりきついよ。」
「そう言うなよ。新商品の開発者は、俺らとは比べ物にならないぐらい苦労したんだ。」
「その言い方だと、新商品自体が悪いみたいじゃないか。あれは店員の取り扱いミスが原因だろう。」
「正直なところ、新商品の取り扱いがなくなったほうがありがたいかな、なんて…」
「おいおい、それ他の人に言うなよ。俺だから良かったものの、下手すると新商品の関係者を侮辱したとして処罰されるぞ。」
「……」
「おい聞いたか、こんど就任した新店長、新商品の取り扱いを停止するとか馬鹿なことを言っていると思ってたけど、本当にやるつもりらしい。」
「……」
「それよりもショックなのは、店員へのアンケートで、半分近くの店員が取り扱い停止に賛成したことだよ。開発者も『努力を否定されたようで悲しい』と言っていた。」
「……」
「これは、新店長が新商品を悪者に仕立て上げて、店内の分断を煽ったせいだ。」
「……」
「いや、人のせいにするのは良くないな。きっと俺達の努力が足りなかったんだ。新商品を取り扱うことの大事さが伝わるよう、もっと努力しないとな。」
「……」