妻へ
いつも思うんだ、なんで特別お金があるわけでもない特別な能力があるわけもないこれといった魅力もないこんな僕をこんなに愛してくれるんだろうって。
なんで「あなたが疲れて働けなくなっても、私が二人分稼いでくるからちゃんとご飯だけは食べてね、そのために看護師になったんだから。」なんてこと言ってくれるんだろうって。
僕だって男だから、強く在りたい、君を守らなければって、そう思うよ。でも、その気持ちとは裏腹に、君を前にしたら、君の愛に触れたら、たちまち涙がこぼれてしまうんだ。
「ごめんないつもいつも、男のくせして情けないよな」と言う僕の頬を、いつも君は優しくその白い手で包んで、何も言わない。君は君で大変な苦労をしてきたのに、そんな影を少しも見せずに。そのひたむきさが時に痛いよ。
「あなたが生きてる世界だからきっと良いことが待ってると思ってた、だから苦労したとは思ってないの。それは今も変わってないよ、あなたの生きてる世界はやっぱり良い世界だなって思う。」
もし君が病気をしたら、先進医療だって何だって受けさせてあげたい。皮膚だって骨だって血液だって分けたい、君が助かるなら命だって差し出していい。
君が仕事で気を病むようなことがあったら、すぐにでも辞めていいよって言ってあげたい。お金が足りないようだったら土日に日雇いの仕事をしてでも君にご飯を食べさせるよ。だから心配しないで。
君の確信が間違いじゃなかったってことを証明するために僕の人生はあると、そう思うんだ。君が泣きたいときに安心して泣かせてあげられるような人間になるから、君は君の確信を信じてついてきて。
結婚してから来週で1年が経つけれど、何もかもを投げうって君と生きていくと決めた僕の気持ちに変わりはないよ。目が覚めて隣で眠っている君の姿を見るたびに、あぁ君が生きていることが嬉しいなって、この人のために今日も頑張ろうって、毎朝そう思うんだよ。
僕を見つけてくれて、選んでくれて、本当にありがとう。これからもよろしく。初めて書く手紙だというのに、僕の話ばっかりでごめん。また君の話もちゃんと聞かせてね。