2015-01-24

おじいちゃんの髪の毛

変な話だけれど、

さいこから、祖父が亡くなったら、祖父の髪の毛をハサミで少し切って、お守りとして持っておきたいと考えていた。

なぜそんなことを考えたかは分からないけれど、いずれ亡くなることは子供ながら理解していて、身の一部を分身として持つことで、いつも一緒にいられると考えていたのだと思う。

私は祖父が大好きだった。

そんな祖父が亡くなった。

でも、髪の毛を持っておくという考えは浮かばなかったし、また浮かんでもそんな不謹慎なことはしなかったと思う。

なんだか申し訳なくて。全部廃にしてあげて天へ返してあげたいという気持ちだけだった。

数カ月後、祖母から、祖父の形見だといって母親経由でセーターをもらった。

そのセーターは、百貨店で祖母が珍しく祖父へ買ってあげたものだった。かなり高かったらしく、一緒に付き添いで行った母親は驚いていた。

祖父は、お客さんが家に来たり、外に出かけたりするときには、決まってそのセーターを着ていたそうだ。

家に郵送で届いたセーターは、洗濯に出した袋に入っていた。

から出して顔をうずめてみたが、洗いたての柔軟剤匂いしかしなかった。

祖父は車の運転が大好きだった。最後の5年間は、体が悪くて運転できなかったけれど、いつも免許証大事に枕元に置いていた。

そのセーターを来てレンタカードライブに行った。

おじいちゃん、見てる?今、おじいちゃんのセーターを来て運転しているよ?

家に帰ってきて、セーターを脱いだとき、ふと襟元に白いものが光った。

何だろうとよく見てみると、釣り糸みたいなものが網目から顔を出していた。

指でそっと摘んで出してみると、短い白髪だった。

目の前がわっと歪んで、急に目から涙が溢れてきた。

大好きだったおじいちゃん。

糸の間に挟まって、洗濯しても取れなかった白髪を見て、二度と会えないことを改めて実感して胸が苦しくなった。

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