とある経済学科で数十年教壇に立ち続けた教授が、定年を迎えることになった。
彼は最後の授業でこう語った。
「私たちは、後戻りすることのできない不可逆な時間の流れの中で生きている。そんな中で私たちは、不確実な未来へ向けて決断を下さねばならない。
その決断の時とは、他ならない“いま”である。何を選び、何を捨て、何のために生きていくのか。私たちは常に決断を迫られている。
そして決断を迫られたとき、私たちは手持ちの情報だけでは不十分過ぎることに気づかされる。それでは、私たちはどうすればよいのだろうか。
ここに1つの方法がある。それは、歴史を学ぶことだ。そこから得られる教訓、法則を“いま”に応用し、よりよい選択を実現することができる。
無味乾燥で、つまらないと思われがちな歴史だが、それは世界が創りあげてきた壮大なドラマに他ならない。
そんな歴史を学ぶこと、なかでも経済史、経済学史を学ぶことの意味と意義、面白さを伝えたくて、私は今日まで奮闘してきた。