この世界が結局幻に過ぎないことを、昨今のメタフィクションブームが教えてくれている。
何かに没入することは素晴らしいことだが、それに囚われたり、あるいは自分が束縛されているように感じたりしたのならただちにそこから離れよう。
一つ上の視点から見ると、全部が滑稽で、全部がお笑いに過ぎないのだから。
大震災も殺人事件も戦争も失恋も解雇も高額当選も世界一も結婚も死さえも。
全ては幻、全ては滑稽な舞台劇。
物語とはその物語にのめりこむことを目的としているのではない。
物語とは、現実が物語であること、物語は幻であること、幻は存在しないこと、存在するのはただ私のみであることを教えてくれるツールなのだ。
メタフィクションはフィクションよりもさらに効果の高いツールである。人類がこのツールを発見したということはすなわち、「現実は絶対的なものである」という自らに課したルールから自由になるときがやってきたと、とうの人類自体が気づき始めたということだ。