2023-12-10

大学生の頃の話

もう何年も前の話。

私は大学生の時、当時の文学部所属していた。

それは本来文学部から派生したもう一つの文学部のようなもので、今にして思えばサークルと呼ぶには少し禍々しさがあった。

その文学部には女性しか入れず、不文律として”処女であること”が条件だった。

私は入部後にそれを知り、そして除籍にはならなかったのはつまりそういうことだ。

回生になると彼氏が出来た。

私にとっては初カレで、そして彼氏が出来たということは、つまりそういうことだ。

二人で連れ添って学内を歩き、何度か部長とすれ違ったことがある。

私は焦り、挨拶しようか誤魔化そうかもごもごとしていると部長はその切れ長の目で私を一瞥し、何も言わずに通り過ぎて行った。

その年の文化祭文芸部では同人誌を出すのが常だった。

小説アンソロジー。各々が一篇を執筆し、それを編み込んだ一冊。

私は時間がなく参加できなかった。しかし当然、一冊を購入した。

読むとどれもが独特の視点であって面白い

部長は何を描いたんだろう?と期待して読むと、唖然とした。

そこには一人の女性顛末思弁的に描き、女性は最終的に悲劇的な結末に陥っていた。

端的に言えば、地獄に落ちていた。

その女性モデルは明らかに私だった。

私は退部した。

それから部長とすれ違うことがあっても、声をかけることはなかった。

その後、あの文芸部がどうなったのかは知らないし、知ろうとも思わなかった。

出来るだけ距離を取ろうとしていたのだから仕方がない。

でも最近になってたまに思う。

部長は今、どうしているんだろうか。

年末大掃除を早めに始め、当時の小説を見つけては手に取り、ふとそう思った。

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