殆どテレビを見ない子供だったから、その頃AKBについては大島優子と前田敦子ぐらいしか知らなかった
アイドルに特に興味もなく、可愛いともブスともなんとも考えたことがなかった
その頃は多分高学年ぐらいだったと思うのだが、(中学生だったかもしれない)夏休みの昼下がり、祖父母の家で手持ち無沙汰にテレビを見ていたところ、ひな壇にずらりと並んだAKBの中に美女がいた。
こんなに可愛い人間がいるのか、こんなに完璧な人間がいてよいのか、と驚いた。
生来ぼんやりした人間で、美醜という概念が自分の中に確立されていなかったので、彼女は私の中に始めて現れた「美」だった。人間の顔はじゃがいもみたいなもので、ツルツルしていようとボコボコしていようとじゃがいもはじゃがいもだ、というような朧げで適当な価値観の中を生きていた私にとってそれは実に衝撃的だった。
こんな可愛い人間がいるなら誰にも勝ち目なんかないじゃん…という小さな絶望感を味わった。なぜ人はアイドルを好きになるのか、始めて理解した。
その後、特にAKBに興味を持つことがないままAKBブーム過ぎ去り、私は柏木由紀の事を忘れた。ジャニーズのイケメンだと言われる顔にも、売れっ子の可愛い女優にもピンとくることがないまま、またじゃがいも人間の世界を生き始めた。
橋本環奈1000年写真には、確かに私は感動したのだが、それでも柏木由紀の時の感動に勝るものではなかった。
夏になると、柏木由紀の事を思い出す。
今にして彼女の画像を見返すとどう考えても絶世の美女ではない。
しかし、脳のバグか夏のいたずらか、柏木由紀が絶世の美女に見える日もある。案外恋や愛というものもそんなところから始まるのかもしれないと思う。
初恋のまぼろしは一瞬。