2019-03-02

夜の校舎の窓ガラス壊せる人は、なんで壊せるのだろう。

夜の校舎の窓ガラス壊せる人は、なんで壊せるのだろう。


壊す前に「これを壊したら、朝礼があって、やったやつはだれだーみたいなことを聞かれる」と思わないのだろう。


実家暮らしの29歳(休職中)の男は考えていた。


今日は男が大好きなラジオ番組イベントがある。芸人10年間続けた深夜ラジオイベント

男はそのイベントライブビューイングを見に行く予定だったのだが、そんな日に限って風邪を引いていた。


一日ぶりに入る風呂の中にスマートフォンを持ち込み、そのイベントレポートをチェックしていた。

楽しそうだ。

とても楽しそうだった。

楽しそうで憎かった。


風邪ひいてても行けばよかった。。」

そう思いながらスマートフォンを脱衣所に置き、洗い場の椅子に座る。

目の前の鏡には自分の顔。髭をそっておらず、風呂を入っていなかったせいか髪の毛も脂ぎっており、とても醜い。


ふと鏡を殴って割ってしまいたい、と考えた。殴って割ればどれだけすっきりするのであろう。

ただ、殴った後はどうなる?

鏡の中の醜い男はいなくなるが洗い場の男は消え去らない。

その異音に気付いた家族風呂場にきて何があったかを聞くだろう。

そのあとは「お前はもっとできるぞ、応援してる」と言われるだけの煩わしい家族会議があるんだろうな。


そんなことを考えてしまい、男は鏡を殴るのをやめた。



直後に、男は強い強い息苦しさを感じていた。

そして、もし今の考えが間違えだったら、鏡を殴ってもよかったんじゃないか。と考えていた。

もし、あの時の心配が実現しなかったら、大嫌いだった水泳部をやめて自分でもばかげた夢だと思っていたプロレスラーになるための努力をしてもよかった。自分の好きなように生きることを恐れないでもよかった。


わずかな時間だが永遠に感じる息苦しさの直後、男は殴ってみようと思った。思いっきり殴ってみようと思った。

男は殴った。鏡ではなく、鏡の横の壁を。

プラスチック製の壁面だからなのか、分厚い下敷きを殴ったような感触があった。

壁の奥に空洞があるようで、思いもよらない大きな音が鳴った。

男は音に反応して親が来るかと心配したが、来ない。こんなものだ。

壁を殴れた自分を誇らしく思えた。だがこんなものだ。


男は決めた。来週アメリカで行われるプロレスイベントに行くことを決めた。

自分海外旅行を行ったことがない男は、そう決めたのだ。

  • アラサーなら知らなくても無理ないけど敵対している他校の校舎を襲撃するんですよ。

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