2015-06-05

ここに入社したら僕はこの手を汚すことになると思った

今日面接したところはまあいわゆる大手で、実際ビルバカでかくて出入りしてるサラリーマンスーツに革靴、おしゃれ刈上げにフェリージのカバン的なイカニモな人たちばっかりだった。ちょっと憧れる。うん。よし、気合い入れよう。

一応、時間に余裕もって到着。でかい入口。でかいドアを押しあける。ロビーもでかい。受付のキレーなお姉さんに名前告げる。IDカードを手渡される。応接フロア直通のエレベータはこちらです。彼女が指さすエレベータもとにかくピカピカでフロアボタンもめちゃくちゃあってとりあえず指定された35Fってボタンを押す。高速エレベータ。はやっ。日立とか?東芝とか?


降りるとこれまためっちゃかいドア。ノックして返事を待つ。どうぞ。ドアノブに手をかけて会議室に入ったとこまでは覚えてる。・・・るんだけど、中に入るとちょう高そうなスーツにド派手なオレンジネクタイした役員ばっかりでむちゃくちゃ緊張。中央で一番偉そうにしてるのが社長だ。さらに緊張する。緊張しまくる。そんでなにしゃべったかわかんないまま面接終わると急にお腹痛くなって廊下奥のトイレにかけこんだ。



とりあえずお腹の急降下はことなきを得て洗面台に手をかざそうとする。と、ガヤガヤ言いながらさっきの役員とか社長が入ってきた。なんか僕のこと「けっこうよかったんじゃないか?」みたいに雑談してる声が聞こえてきて、うわー、マジすか? やべー、これは受かる! って、はわっ隠れるところもないのに顔とかかくしたりなんかしていやいや挨拶しないとっつってむりくり挨拶しながら出ようとするも、気づかれる。

「いや君面白かったよ」とか言ってくれて肩とか叩いてくれる。便器に立つ役員社長。洗面台に僕。

用をたす役員社長。洗面台に僕。

用を終えて体を震わす役員社長。洗面台にはまだ僕。

チャックをあげてこっちに歩いてくる役員社長。それを見てる僕。

「がんばりたまえよ」

肩を叩く役員社長。肩を叩かれる僕。

立ち去る役員社長。立ち尽くす僕。

そして気づく。

あいつら手を洗ってない。

手を洗ってない!


たぶんあのばかでかいドアも洗わない手で。

エレベータの大量のボタンもあの手で。

受付のキレーなお姉さんもあの手で。

彼女が手渡してくれたこのIDカードもきっとあの手で。

そしてそのどれもに僕は手を触れたのだった。

僕はあいつらの汚い手に触れてしまったのだった。


もちろん。もちろん、この手を洗えば一度はキレイになる。キレイな手に戻れる。

でもこのままこの会社に入ったら、僕はこの手を汚しつづけることになる。

そう思った。


辞退した。

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