生徒全員に、好きな異性を書かせて提出させる、そんな子どもじみたことをする女の教諭だ。
彼女は君臨したがり、掌握したがった。
流石に苦情が出た時には、クラスを巻き込んで臭い三文芝居を始め、単純な子どもは涙を流して謝りまくる、しかし大多数はシラけて何も言えなくなる…彼女は万事、そんな感じの学級運営をしていた。
お気に入りは徹底的に身贔屓した。男子だ。彼がイジメを働こうが、どれほどルールを破ろうが、彼女は決してそれを咎めることはしなかった。擁護し、スルーしていた。思えばショタでは収まらない、世間知らずな中年女の醜い愛情表現。気持ち悪い。
よほど掌握が上手く行ったと感じたのだろう、年度が変わり、通例ならシャッフルされるクラス編成も、彼女は職員会議で粘りに粘り、シャッフルされなかった。結局、彼女のワガママに2年間もつきあわされた。年度がさらにかわり、彼女につきあわなくてよいのだ、そう思えた時には、子どもゴコロに大層嬉しかった。
小学生の倍以上の時間を既に生きているが、あんなに無駄な時間を過ごしたことは人生で未だにない。
そんな彼女の話を風の噂で聞いた。
なんでも流産したらしい。
悲しみはいかほどかと思ってみようとしたが、無理だった。
同時に、嫌な自分を感じ取り、嫌な気分になった。