2014-08-08

歌舞伎町のじいさん

その昔、学生時代歌舞伎町で働いていた。

歌舞伎町といってもホスト客引きといったようなものではなく、雀荘で働いていた。

麻雀好きな人は知ってるかもしれないが、いわゆるメンバーってやつ。

 

そのバイトがすげーしんどくて、勤務時間が22時-翌10時で休憩は30分もない。

後々大学労働法とか勉強したときに、いかに自分ヤバイ環境で働いていたかを思い知った。

でもそんなバイトを辞めなかったのは、その雀荘に集まる人たちに惹きつけられたからだ。

 

ホストキャバ嬢といった「歌舞伎町人間」って感じの人より、断然サラリーマンや老人の方が多かった。

なかでも、毎週月水金の夜3時にやってくるじいさんがすげーいい人だった。

いつも俺にパンを差し入れしてくれて、麻雀打ちながら戦後の話や東京オリンピックの話をしてくれた。

 

結局あの人は何歳だったのか分からないけど、大分はいってたんじゃないだろうか。

じいさんはまさに昭和麻雀の打ちてで、じっくりと大物手を狙うタイプだった。

それに対して、他のメンツは鳴きを多用する現代風の人がほとんど。

じいさんは多くの場合、負けこんでお金をおいて行った。

 

今思えばじいさんは、残り少ない時間をじっくり楽しみ、麻雀を打っていたんじゃないだろうか。

貴重な余生を俺みたいなやつに割いてくれていたと思うと、なんだか泣きたくなってくる。

それは多分、俺がじいちゃんっ子で、死んだじいちゃんが大好きだったからだと思う。

いろいろあって、そのバイトは辞めることになり、俺は歌舞伎町を去った。

今でも新宿駅の東口付近を通ると、あの頃のことを思い出す。

じいさんは元気だろうか。

あの元気な「ツモ!!」という声と、温かい「おう、増田。ちゃんと飯食ってるか?ほれ、このパンでも食え」

という言葉が甦る。

いつまでも元気でな、じいさん。

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