という話が舞い込んできた。
友達の紹介というやつだ。
30歳を過ぎて、こんなリア充みたいなことになるとは思わなんだ。
で、共通の友達を交えていざご対面だ。
ところがだ、一目見た瞬間に、なんか嫌な予感がした。
ぱっと見は、浅黒い肌。ばっちりつけたボーボーのつけまつげ。毛先は痛んでチリチリとしてる。
顔の感じはギャルっぽいのに、服装はエスニックというかナチュラルというか。
3人口数少なく食事は進む。
で、嫌な予感の正体がわかる。
ああ、なるほど、これだ。
僕は狼か羊かって言ったら、間違いなく羊である。
「なんだこの男の出来損ないが!フェロモン足んねーよ!」
と思われてるに違いない。
と思った瞬間、もうダメだった。
弁解させてもらうと、筋肉だったらそこらのガテン系なんかには負けない自信はある。
友達がいない一人ぼっちだろうと、自分のペースでもくもくと続けられる。
会費が高いジムともなると、うるさい高校生や品のない低所得者もこない。
ジムというところは自分のペースで黙々と続ける人間だけが集まる場所で、会員同士もドライだ。
スタッフと会員の関係も従業員とお客さんだ。
もう10年、残業続きで行けない時期を除いては、週に3回は体を鍛えてきた。
しかし、それでも羊は狼になれない。
ワイルドさは欠片もない。
着痩せするタイプというだけではなく、インドアのせいで肌が白いというだけでなく、
「ベッ、ベッベッッベ、ベンチプレス110kgあがるもんね!」
と会話の流れをぶった切って叫びたくなる。
叫んだところで鼻で笑われるんだろうな。
ああ、もう
って叫んだ。
つもりがやっぱりただ押し黙って、ニコニコ笑ったまま
「今日はありがとう。お代?いやいやここは男の僕が全部出すよハッハッハッ」
と全員の会計をして、解散。
今日は酒でも飲みたかったけど、強い男になるために今日も控えた。
そのぶんプロテインを流し込んだ。
今日は枕を濡らすと思う。
確かに、ジムで鍛えている系のマッチョには、非コミュの匂いが漂ってる人多いよな。
マッチョってガテン系よりもホワイトカラーのほうが多いよね。 短髪ヒゲのあんちゃんとかこそ、見た目にいかついオーラを出していても、よくみると細いかただのデブ。 ワイルドなオ...