はてなキーワード: ヤリイカとは
生きているイカを間近で見たのはあれが初めてだった。
中では数匹の元気なイカが、水流にのって水底を泳いでいた。
じぃっと見ていると、ふいに一匹が斜めに泳ぐ。水面に向かって。
にょき。
そんな効果音が似合いそうな動きで、イカの胴が水面から飛び出した。
そのまま、頭近くまで浮き上がる。
……目が合った。
イカの目は、高性能らしい。
目の後ろ側に神経束がある人間と違って、レンズの外側に神経が通っているそうだ。
色が見えるのかどうかは、私にはわからない。対角線上に目がついているので、立体的には見えないだろう。
そんなイカと目があった。
ちゃぷん、と。
思考している間に、イカは水中に潜った。
さよなら。心の中でそうつぶやいて、私は水槽を離れようとする。
三角形で、うねり動いている。
イカの耳だ!
イカはその耳を水槽の縁に載せるようにして、半周ほど水槽を泳ぎ、最後にもういちど水面に目を出してから、また水底に戻っていった。
その日の夜のこと。
夕食は、函館で有名な活イカだった。
皿の上で身をよじる姿を見て初めて、あのイカも食べられるために飼われていたんだろうな、と気付いた。
今日か明日か知らないが、彼もどこかの人間に生きたまま切り裂かれ、食べられるのだ。
id:fromdusktildawnさんは、はてな匿名ダイアリーでは大きく振りかぶって釣竿を垂らす。
彼の自前の劇場のエントリーからは、どこかドラマチックでエレガントな「コンテンツとしての整合性とクオリティを守ろう」という意識が感じられるし、最近は幾つものテーマを重畳させてエントリーに深みを与えるよう、創り方を変えてきているようにもみえる。
しかし、はてな匿名ダイアリーにおける彼はそうではない。隙の多そうな、釣り針が延々と連なるようなエントリーを垂れ流す。その姿は、まるで長さ数キロメートルに渡る延縄を流す漁船の如しだ。「餌選び」も劇場とは違う。ドラマ性やエレガント性を度外視した、とにかく食いつきの良さそうなネタをブツ切りにして針に引っ掛ける。多少釣り針が餌から顔を出していても、なぁに安い魚は気づかない。なぜなら、安い魚というものが、「釣り餌だという事実」よりも「おいしい餌だという事実であって欲しい願望」を視るものだし、だからこその安い魚なのだから。
時にはトラックバックという名の連鎖反応が、延縄に面白い風景を与えるかもしれない。釣り餌に噛み付いた鰯にヤリイカが噛み付き、ヤリイカに鮫が噛み付いて...。釣り冥利に尽きる。
fromdusktildawnさんは時々覆面をつけた状態で増田海域を訪れ、片手で操船しながら自分の入り江よりも遥かにぞんざいに、大胆に、トン数重視で、延縄を仕掛けては安い魚を大量捕獲する。ブックマークという名の魚河岸に並ぶ、安い魚、まずい魚、小さな魚。巧妙なことに、増田の釣りエントリのぞんざいさは劇場と増田のギャップを際立たせるし、文体マスキング技術の高さがステルス性を保証しているので、どれが本当のfromdusktildawnさんの延縄漁船なのかは誰にもわからない。俺にもわからない。わかったらビビる。
...という妄想です。