2012-12-16

イカかわいい

イカ娘じゃなくてイカ。スルメイカ

昔、函館の朝市で水槽に飼われてたのを見た。

生きているイカを間近で見たのはあれが初めてだった。

水槽ドーナツ型で、ホースで水流をつけていた。

中では数匹の元気なイカが、水流にのって水底を泳いでいた。

じぃっと見ていると、ふいに一匹が斜めに泳ぐ。水面に向かって。

にょき。

そんな効果音が似合いそうな動きで、イカの胴が水面から飛び出した。

そのまま、頭近くまで浮き上がる。

……目が合った。

イカの目は、高性能らしい。

目の後ろ側に神経束がある人間と違って、レンズの外側に神経が通っているそうだ。

から盲点がない。

色が見えるのかどうかは、私にはわからない。対角線上に目がついているので、立体的には見えないだろう。

私にはイカの見ている景色想像できない。

そんなイカと目があった。

ちゃぷん、と。

思考している間に、イカは水中に潜った。

さよなら。心の中でそうつぶやいて、私は水槽を離れようとする。

ふいに水槽の縁に何かが見える。

三角形で、うねり動いている。

イカの耳だ!

イカはその耳を水槽の縁に載せるようにして、半周ほど水槽を泳ぎ、最後にもういちど水面に目を出してから、また水底に戻っていった。



その日の夜のこと。

夕食は、函館で有名な活イカだった。

皿の上で身をよじる姿を見て初めて、あのイカも食べられるために飼われていたんだろうな、と気付いた。

今日明日か知らないが、彼もどこかの人間に生きたまま切り裂かれ、食べられるのだ。

ああ、なんとエロチックなのだろうか。

願わくば、彼がイカリングにされていませんように。

願わくば、彼を食べるのが、私と同じような若い女性でありますように。




あれ、活イカってヤリイカだっけ? スルメイカだっけ?

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