2024-03-01

anond:20240301130044

男子年長じて、あるいは工につき、あるいは商に帰し、あるいは官員となりて、ようやく親類朋友の厄介たるを免れ、

相応に衣食して他人不義理の沙汰もなく、借屋にあらざれば自分にて手軽に家を作り、

家什はいまだ整わずとも細君だけはまずとりあえずとて、望みのとおりに若き婦人を娶り、

身の治まりもつきて倹約を守り、子供は沢山に生まれたれども教育もひととおりのことなればさしたる銭もいらず、

不時病気等の入用に三十円か五十円の金にはいつも差しつかえなくして、

細く永く長久の策に心配し、とにもかくにも一軒の家を守る者あれば、

みずから独立の活計を得たりとて得意の色をなし、世の人もこれを目して不覊独立人物と言い、

過分の働きをなしたる手柄もののように称すれども、その実は大なる間違いならずや。

この人はただ蟻の門人と言うべきのみ。

生涯の事業は蟻の右に出ずるを得ず。

その衣食を求め家を作るの際に当たりては、額に汗を流せしこともあらん、胸に心配せしこともあらん、

古人の教えに対して恥ずることなしといえども、その成功を見れば万物の霊たる人の目的を達したる者と言うべからず。

学問のすすめ 福沢諭吉

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