10年前に活動停止したミュージシャンの音楽を、今もたまに聴く。プレイリストの端っこに入っているその音楽は、同ジャンルの音楽の中でも特に繊細かつダイナミックで、聞き流している中でも耳が音に引き寄せられる。
デジタルとアナログの間を行き来しながら推進力を保つリズムが音空間を作り出し、どこか懐かしく寂しいメロディは徐々にハーモニーの中に溶けて消え失せる。音の遠近は入れ替わりながら、夕暮れや薄暮のような喪失と誕生の印象だけを常に残していく。
その音楽は聴く度に新しい発見があるが、聴き込むことはしていない。同じミュージシャンから新しい供給が今後あるとは思えず、既存の音に飽きてしまうことが恐ろしいからだ。
販売が終了したお菓子の残りを、少しずつ、名残惜しみながら食べていくように、プレイリストの中で偶然出会った時に、耳を澄ます。