わたし*1の生まれ育った街*2の中心には小高い丘*3があって、そこにはひとつ、古い教会*4がありました。
毎日、12時になると、その教会から鐘の音が聞こえた*5んです。メロディは、ウエストミンスターの鐘……だったらカッコよかったのですが、実際には、ただ、12回鐘をうちならすだけでした*6。
子供の頃はただ、「ああ鐘が鳴っているな」「鳴り止まないな、うるさいな」くらいにしか思っていなかった*7のですが、大人になって*8東京に出てきて*9、正午になっても何も聞こえない*10暮らしをつづけていると、ときどき、あの鐘が鳴る音が、どうしようもなく恋しくなるのです*11。
2 嘘。俺は里帰り出産なので、生まれた街と育った街がまったく異なるし、そもそも街じゃなくて山みたいなところで育った
3 嘘。ない。全体が山だった
4 嘘。宣教師も逃げ帰るような山だった
5 やや嘘。町内放送で鐘っぽいアレンジのなんらかの曲はかかっていた
6 まったくの嘘。
7 そもそも嘘なのでマジで何も思ってない。町内放送で夜9時に流れる「野薔薇」は好きだった
8 嘘。もうアラサーだが、本当にガキのままだ。人生どうするんだ?
9 嘘。田舎に住み続けている
10 嘘。町内放送かなんかで「エーデルワイス」が鳴ってるのが外から聞こえてくる
11 全部嘘だし、もし本当に鐘の鳴る街育ちだったとして、べつに恋しくはならないだろうな
フットノートルダムの鐘
文学の過剰摂取か呼び起こす幻覚。