21時27分、単身赴任中の父親から電話があった。実に1年半ぶりの着信。
野球中継が盛り上がっているときになんだよと思って出ると、普段と変わらない口調で「落ち着いて聞いてほしい」と言われた。
父親が一人暮らしの自分にわざわざ連絡してきたのには理由があるとは思っていたが、何やら様子がおかしい。
「母さんが癌になった。乳癌だ。9月の末にCTを取って転移していないか確認をして10月に手術が……」
頭が真っ白になった。目がチカチカし、前も見えなくなった。とにかく頭がグルグル回る感じがどんどん加速していく。
割と進行しており全摘出が確定していること、手術前に何度か今まで以上に会ってやれと言われたことは何とか思い出した。
何も言えず電話を切り、頭を整理する。と言ってもすぐにできるわけがないが。
まず頭によぎったのは、今すぐにでも会いに行くべきかどうか。
自分は医者でもなんでもないし、会って何かできるわけでもない。残念なことに自分の貧相な頭ではこの状況でどんな声をかけていいかもわからない。
そりゃ会いに行くべきだろ。
何も言えなくてもいいんだよ 会いに行け 母親は会えれば別にそれだけで喜ぶ すぐに会いに行った方がいい
いますぐ切符でもバスでも飛行機でも取って行け
いるだけでも大分違うものですよ、少しだけでも何回か会いに行ってあげると良いと思います。
会いに行くべきです。あなたの存在は母親の力になると思う。 できれば手術日もそばにいてあげて。これは父親のためにも。手術が終わるのをひとりで待つのは精神的にきつい。 快復を...