2020-03-16

三島由紀夫金閣寺

 三島の描いた金閣寺は、美と地獄象徴なんだよ

 作中で登場する、柏木という人物セリフがそれを物語っている

地獄とは、一切が明晰に見えることであるしかも闇の中で!」(新潮文庫129ページ)


 ラストシーン金閣寺炎上する直前、夜闇の中を主人公金閣寺に忍び寄ろうとする

 そのさなか、突如として金閣寺が、一筋の光明もない筈の闇の中で、輝きを放ち始めるのである

思い出の力で、美の細部はひとつひとつ闇の中からきらめき出し、きらめきは伝播して、ついには昼とも夜ともつかぬふしぎな時の光りの下に、金閣は徐々にはっきりと目に見えるものになった。これほど完全に細緻な姿で、金閣がその隈々まできらめいて、私の眼前に立ち現れたことはない。私は盲人の視力をわがものにしたかのようだ。(p.319)

 記憶の力を借りて蘇る金閣の姿、それは正に美であり地獄であったのだ

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