三島の描いた金閣寺は、美と地獄の象徴なんだよ
作中で登場する、柏木という人物のセリフがそれを物語っている
「地獄とは、一切が明晰に見えることである。しかも闇の中で!」(新潮文庫129ページ)
ラストシーン、金閣寺が炎上する直前、夜闇の中を主人公は金閣寺に忍び寄ろうとする
そのさなか、突如として金閣寺が、一筋の光明もない筈の闇の中で、輝きを放ち始めるのである
思い出の力で、美の細部はひとつひとつ闇の中からきらめき出し、きらめきは伝播して、ついには昼とも夜ともつかぬふしぎな時の光りの下に、金閣は徐々にはっきりと目に見えるものになった。これほど完全に細緻な姿で、金閣がその隈々まできらめいて、私の眼前に立ち現れたことはない。私は盲人の視力をわがものにしたかのようだ。(p.319)
記憶の力を借りて蘇る金閣の姿、それは正に美であり地獄であったのだ
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