野村克也「昔のパ・リーグにはいろんな個性的な選手が居ました。名前は出せないんですが、誰もが名前を知っている大打者の話です。
彼と私とではチームが違ったんですが、どっちも若い頃からオールスターの常連だったんで
そういった舞台では同じチームの一員として戦ったんです。
オールスターゲームが終わったあとはチームみんなで一緒に風呂に入るんですが、まあ男所帯ですから みな前など隠さず堂々としたもんです。
これがどうも気になりましてね。ある意味捕手の職業病というやつでしょうか。
そこで私はある先輩と結託して、その選手が頭を洗っている隙に股間を隠してるタオルを奪い取ったんですわ。
するとそこには小さな獅子唐が……。その選手は顔を真っ赤にして逃げるように風呂から出て行きました。
それから何年も経って、互いにベテランと呼ばれる歳になって、その大打者は球界を代表する打者になったのと同時に非常に態度のでかい打者になったんです。
私の囁き戦術なんかもまるで通じない。
そこで私はその若い頃の風呂場の一件を思い出し、こう囁いたんですわ。
『ハリ、お前は態度がでかいのに、ナニは小さいのう』って。
そうしたら張本の顔が信号機みたいに真っ赤になって……。その打席では効果があったんですが、次の打席では空振りの振りをして私の頭をバットで殴りおったんですわ。