抜けないってそういう意味ではなく。
愛も知らず 君を信じて 夢も知らず 僕は泣いていた
アダルトゲーム『水夏』の主題歌、FRAGMENTの歌詞である。僕はこの歌詞を折に触れて思い出す。その度に良い曲だな、と思う。
僕にも当然、かつて愛というものがよく分からない時期があった。
そして愛というものがよく分からないにも関わらず、誰かを愛していた時期があった(なおかつ、その事に無意識でいられた時期があった)。
誰かを愛しているのに、愛が何かも分からない。そして、誰かを愛しているにも関わらず、その事に気付いていない。
それは、何だかまるで夢の中を彷徨っているかのような時期だった。確かに夢を見ている。でも、それが夢であることには気付いていない。夢というものがどんなものなのかも分かっていない。
今でもそんなことを繰り返しているのだろうか?
自分ではよく分からないけれど、昔よりは誰かへの愛情に自覚的になったことは確かだと思う。かつてのように、まるで夢を見ているように、無自覚に誰かを愛することはなくなった気がする。
FRAGMENTの歌詞は次のように続いている。
何も見えず 君と歩いた 深い闇の中を歩いていた
僕は初めてこの歌詞を聞いた時に、歌詞を聞き間違えた。次のように、聞き間違えてしまった。
何も見えず 君と歩いた 深い闇の中を歩けた
全然意味が違ってしまっている。それでも、僕は深く何かに打たれた。
深い闇の中を歩いているということは、深い闇の中を歩けるということなのだ。そう思った。
僕はこの歌詞を折に触れて思い出す。