2020-01-17

バイト日記

常連さんの中に、

「お願いします!」

一言で全ての注文を済ませる人がいる。私は、変な奴だなぁ、と思いながらも、いつものやつを用意してレジを打つ。

取扱のタバコの種類が増えすぎて、数種類がタバコからあぶれてしまい、別に売れない種類でもないのに辺鄙な所に、番号札も付けられずに並べられている。売れない種類でもないからこそ、辺鄙な所に置かれていると言ってもいい。

ただ、バイト私共お客様もそのタバコ正式名を中々覚えないので、

「あの棚の左の棚の、右側から三番目の、灰色の、6ミリの……」

という、純文学みのある(あるいは魔方陣グルグルっぽいと言ってもよい)曖昧な指示をされ、

「これですか?」

「そう、それっす」

みたいな受け答えをしてタバコを出す訳で、それを三回ほどやったら、タバコ銘柄を覚えないわりに、私共お客様の顔とタバコパッケージの色とミリ数と辺鄙定位置をセットで覚えるのであり、お客様の方も、私共の中で「話が通じる」者の顔を覚えるわけだ。

そしてまた、

「お願いします!」

で、全ての注文を完了するお客様が、爆誕してしまうのである

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