空を見上げるということをしなくなった。
いつも変わらずそこにあるのに、建物の隙間から見えるそれはさして印象にも残らず、
うだるような暑さの中で、いつも下ばかりを向いて歩いている。
ほんの10年ちょっと前までは、夏場と言えばイベントばかりで、
今となってはあんなに長い休みをどうして過ごしていたのかも思い出せない。
今となってはすべてが淡い思い出で、ぼんやりと靄がかかったような感じがする。
うだるように暑い夏の午後、
クーラーもかけずに蒸し風呂のようなワンルームのベランダから見上げた空は、
とても高く、青く澄み渡り、真っ白な雲は絶えず形を変えていた。
僕たちは変わらないと思っていた。
まだ、何者にもなれると思っていた。
衰えを感じる日が来るなんて思いもよらなかった。
かつては友人みんなやっていたSNSも、
今年の夏は、久しぶりに当時住んでいた街に行こうと思う。
あの日見上げた空に浮かんでいた雲を探しに。