「下見てご覧、老人になったらもっと酷い」
君はまだ若いからと、後輩を励ましたつもりだった。いずれこの社会を担う人を育成しなければいけないから、希望を与えるべきだとは理解していたが喉元から出て来たのはそんな言葉でしかなかった。ここにいては彼に悪影響を与える。静かにその場を立ち去った。願わくば、彼をリードする人物が現れん事を。
「また会おう」
精一杯の虚勢で、精一杯の作り笑顔でそう告げた。
何もかもが順風満帆だと見せておかないと、このパイプラインも途切れてしまう。
家庭を持ち、子供を育て、自分に出来るのはせいぜい加飾する事だった。
少し顔色の悪い友人に向けて言い放つ。お互い頑張ろうと言外に込めて。
だけど次、誰が堕ちるか分からない。冬が終われば春が来る。
しかし到来する春に辿り着けるのは限られた者だけ。
春が終わればまた冬が来る。そこで精神をすり減らされた者達がまた脱落していく。
ほんの少し言語を交わせば温かくなれる気がした。
自分より下だとか上だとか、同じくらいだとか比較ばかりしていないで
自分を固持して生きて行けたら良いのにな。
ここで止まればガソリンは凍ってしまう。ほんの少しガソリンを分け与えよう。
この燃料に火を点けて暖をとるも、次への糧とするのも君の創意工夫次第。それでも嫌だ、辛いというなら頭からこの油を被って一緒に焼身自殺しよう。
上を向いて歩くと上を向いて歩いたら、上にも人が歩いてた。 生まれながらに上にいる、彼らを見てたら涙が出るね こぼれるどころか耳に入る涙が冷たい なんて考えてたら足元が悪い...
「下見てご覧、老人になったらもっと酷い」 君はまだ若いからと、後輩を励ましたりつもりだった。 いずれこの社会を担う人を育成しなければいけないから、希望を与えるべきだとは理...